前回の続きです。

相場は幼稚なのか、という話ですが、ま、たまたまラジオでアナリストが「幼稚」という言葉を使ったんで、私もその表現を使って「幼稚」と言ったわけですが、私が言いたいのは、言うなれば
子供っぽい的なニュアンス
です。

著書にもずっと、「投資なんてのは、実は極めてシンプルで簡単なゲームだ」ということを書いていますが、簡単っていうことは、幼稚と言ってもいいと思うんです。

ただ、著書で言ってるのは
投資におけるシステム、ルールが簡単
だということを言ってるわけです。
相場は上がるか下がるかしかない、投資家にできることは売るか買うかしなかない
という、極めてシンプルな世界である、ということを言ってるわけです。

で、私が「相場なんて元から幼稚じゃん」って言ったのは、それとはちょっとニュアンスが違って、どっちかっていうと、そのルールやシステムというより
相場の値動きのこと
です。
結局、値動きって子供っぽいじゃん? みたいなニュアンスです。

要は、どう理屈をつけたって、相場ってのは、上がるか下がるかしかないわけで、そこから損益を得るだけのゲームですよね。

値動きは、常に上がるか下がるかだけで、じゃあ、それがそんなに「複雑で高度なものなのか?」といえば、全然そんなことないと思うんですよ。

これはね、すごく簡単言ってしまうと、なんだかんだ言ったってね、相場って要するに
うわー、心配だと思ったんで売ってたけど、思ったほどひどいことになんなかったんで、やっぱり買おう
ひぃ~、すんごい下がってるよーパニックぅ~、怖いよー、売っちゃおー
うわぉ、どんどん上がってんじゃん、乗っからないと損だよね、ボクも乗っちゃお~

みたいな、こんなのの繰り返しなんですよ。

貿易戦争を懸念して株価は大幅に下落
なんて言うと偉そうですが
うっわ~、ちょっとヤベえんじゃね? 売っちまおう
って言うと、バカみたいじゃないすか。
でも、結局、値動きって、そういうことなんですよ
こういう言い方で表現すると、バカみたいでしょ?

相場解説みたいに、わざわざ難しい言い回しで表現すると、何かそれらしいですけど、長年、相場を見ていると
結局、値動きは、群集心理だな
と感じるんですよ。
群集心理というと、まだ、難しい言い回しですが、要は、ダイレクトで感情的な反応、ってことです。
パニックになったり、調子に乗った小学生みたいな反応が、延々と繰り返されているだけなんですよ。

いわゆる、材料と反対に値が動いたりする「織込み済み」とかいうのにしたって、結局は、先走って「うっわ~」が出てるだけじゃないですか。

たとえば、近年出てきた、北朝鮮の核ミサイル問題とか、どうですか?
米朝対話がされる前、「核ミサイルやばいんじゃね?」って危機感が高まったとき、日本円が買われてるんですよ。
「有事の円買い」ってヤツですけど、こんなの完全に思考停止現象じゃないですか。
もしも、ホントに核兵器懸念なんだとしたら、韓国の次に攻撃されそうな、近くてヤバい国は間違いなく日本ですよ、米軍基地いっぱいあるし。
理屈で言ったら、普通は論理的に売りでしょ?
核攻撃受けそうな国の通貨を買うとか「アホなのか?」って思いますよね? 
もう、理屈とか抜きで、完全に子供の感情的な反応みたいじゃないですか。

相場の反応って、そんなのばっかりですよ。

確かに、非常に長期的な目で見れば、漠然としたレベルでは、業績のいい企業の株は上がるし、業績の悪い企業の株はそれなりには下がるでしょう。
けど、我々のような短期トレーダーの感覚からすれば、値動きってのは
「うわ~、ヤバくね?」
「ひえ~」
「イケイケ~」

みたいな、そんな感じだと感じるんですよね。

ノーベル経済学賞を受賞したロバート・J・シラーは、多くの投資家に対して調査を実施し、投資家が金融商品を売買する理由は、相場で言われていることに反して
値動きそのものにある
と結論づけてます。
要は、相場解説などの説明のようにニュースや材料などにはなく
価格の動きを見て感情的に売買する
ということです。
つまり「こんなに下がっちゃったから売る」とか「どんどん上がってるから買わないと損だぞ」とか、「暴落してるからパニック売りする」とか、そういう人が大半だということです。
これって、要は、私が今言ってるような話ですよ。

いわゆる、レジスタンスだとかサポートだとかいうのを、私は重視して売買しますけど、ああいうのだって、要は「このへんで止まるんじゃね?」「前にこのへんで止まったから、今度もこのへんかな?」みたいな、もう、すごく単純で子供っぽい発想じゃないですか。
でも、実際にそれが機能するぐらい、多くの人間が、そんな単純でバカっぽい売買をしてるわけですよ。

ホントね、あえて難しい表現を取っ払ってしまえば、完全に、子供の世界みたいな話じゃないですか。

だから、幼稚、って言ってるんですよ。


けどね、いくら幼稚でも、そこから利益を得るのは、難しいんです。
ここがクセモノなんですよね。

利益を得るのが難しいと、大人の脳みそは、何か「ややこしいこと」が必要だと思ってしまう。
そこで、いろんな「無駄で余計な」ことを、付け加えていっちゃうんです。

やっかいなことに、人間ってのは、そんな無駄なことをするように出来ている。
このへん、行動経済学の分野です、次回の本は行動経済学の本、書こうと思ってます(笑)

経済動向を気にしたりなんやかやと、片っ端から「原因」「要因」と勝手に思えるものを付け加えていき、複雑な分析だとか、ややこしい解析だとか、意味不明な論理的推測だとか、思いつく限りの、ありとあらゆるものを付け加えていき
勝手に、どんどん、投資家が自分から、値動きの解釈を、複雑にしていっちゃってるんですよ

これはいわば
自分で自分の首を絞めている
ようなものです。

著書にも書きましたけど値動きの説明なんてのは、全部後付けの理屈じゃないですか。
FRBの決定会合の結果がどうこう、とか説明したものの、本当は、たまたま、そのタイミングでウォーレン・バフェットが、なんかムカついたので、手持ちの株を手放しただけなのかもしれないじゃないですか。

なんで下がったのか、上がったのか、そんな理由は売買した投資家全員にアンケートをとらない限りは、永遠に分からないんだから、理屈つけて分析したり解説するだけ無駄なのに、そーいうことをやっちゃう。

また、そこで商売をしようとする詐欺師たちも、そんなに単純じゃ商売にならないから、そこにやたら複雑な相場特有の言い回しの数々や、経済用語などの言い回しで、複雑な理屈をつけたがる。

本当は、すんごくシンプルだったはずのガンダムが、2018年ごろのデザインにリニューアルされてると、やたら無駄なディテールが増えて複雑になってるみたいな感じです、たとえ悪いですか?(笑)
まー、アレですよ、昔の極めてシンプルなマジンガーZと、もう何がどうなってんだか分からないぐらいに複雑な最近の実写版トランスフォーマーみたいなもんです、余計分かりませんかね(笑)


ま、とにかく、ホントは、値動きってのは、実はすごく「シンプル」で「幼稚」なものだと思うんです。

ところが、そんな「無駄な複雑化」が付け加えられ続けたのが、今の投資の世界で、だから、相場に参加すると、何か
相場ってのは、すごく難しいものだと思ってしまう
投資で勝つためには、すごく難解な分析法などを理解しなければいけない、などと思ってしまう

わけで
そのとらえ方がずーーーーーーーーーーっと抜けない人
がほとんどなんです。


思い出してもらいたいんですが、誰もが最初に経験があると思うんです。
投資をはじめるまえにチャートを見ていると
ここで買って、ここで売ればいいんだよね? みたいに、子供でも分かる感じで、すんごく簡単に勝てそうに思えたんじゃないですか?
全くバイアスがないときにチャート、すなわち「値動き」を見ると、実にシンプルで、簡単なものなんですよ。

この「最初の印象」が、相場の値動きの正解のとらえ方を表していると思うんですよ。

相場師の人たちは、弟子を教えてきて、いわゆる「学歴の低い人、頭があまり良くない人」のほうが、勝てる投資家になりやすい、と言ってます。
それはなぜかというと、そういう人たちは、相場に複雑な理屈をつけない、ただひたすら、教えられた実践だけをやろうとするから、すぐに上手になる、というわけです。
へたにカシコイ人は、無駄な理屈をつけたり分析したりして、どんどん話を複雑にしていっちゃうので、勝てない、というわけです。
値動きは、実は単純だから、素直な人は、頑張ってそこに乗っかろうとする、そうすれば勝てる、というわけです。
同じような話で、子供に少し説明してチャートを見せると、的確に売買ポイントを当てる、という話もあります。
値動きは子供にも分かるほど簡単なんですよね。
「子供にも分かる」というより「子供のほうが分かる」んですよ、大人の余計な色眼鏡がないですから。
大人には、その「素直になる」ということ、あるいは「素直に相場を見る」ということが、ものすごく難しいんです。

私が「なるべく情報を減らせ」と言ってるのも、余計なものを付け足すほど、複雑化して勝てなくなるからです。


でも、投資を始める前は「ここで買えばいいんじゃん」とか思ったことが、実際にやってみると「ぜんぜん出来ない」わけです。
なんつーのかな、子供たちがシンプルなルールでゲームを遊んでるので、簡単そうに見えて「おっちゃんも入れて」って言って参加したら、なまじオッサンはいろんな余計なことを考えて深読みしちゃったりするので、全然子供ようにうまくいかない、みたいな感じですね。

相場は高度で複雑で難解なわけじゃなくて、実に単純、シンプルなんです。
難しいのは、その単純な世界で実際に行動して「勝つこと」なんですよね。

相場で勝つには、考えを、簡単に、シンプルにしていく必要があるんですよ。
誤解を恐れずに乱暴な表現で言えば、相場では
バカになったほうが勝てる
と思います。